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2025.3.28.FRI

共創とは?できないと認めた側が強い理由

新規事業の立上げパターン 新規事業のワナをどう避けるか?

以前、受託の案件に参加して、パートナー企業から「正論坊や」と揶揄されたことがあります。その一件があって、僕は受託案件に参加することを社内で禁止されています。

先に一行だけ置きます。共創とは、複数の会社が対等に関わって新しい事業を生み出す進め方のことです。そして出発点は、仲良くやることではなく、できないことを認めることです。

僕はアルチェコで、大企業と共創という形でインキュベーション事業を展開しています。今日は、僕らが提案している共創スキームの話をしていこうと思います。

前置きはさておき、本題に入ります。

① 大前提は、一社ではできないことをやる

① 大前提は、一社ではできないことをやる

僕らの強みは、事業を生み出すチームづくりと、それを支える柔軟なスキームのバリエーションです。

大前提は、一人、一社ではできないことをやることにあります。

コンサルだと、できないと認めたら負け、というところがあるので、背伸びして隠してしまう傾向があると思います。でも僕らは、できないことを認めます。認められるのは、できることに自信があるからです。できるを結集して、できないを仕組みでカバーすればいい、という発想でやっています。

根本的には0→1では終わらず、1→10のフェーズ、10→100のフェーズまで、長期的な成功を意識しています。そもそも隠す余裕がありません。いくらかっこよく見えても、売上と利益が出なかったら意味がないからです。

② 全員、孤独に始めて、地雷を踏んできた

② 全員、孤独に始めて、地雷を踏んできた

アルチェコのメンバーは、創業、スタートアップ、大企業とフィールドは違いますが、ジョインする前は全員インキュベーションに関わってきた経験があります。

共通しているのは、みんな孤独に一人で始めて、地雷を踏みまくって傷ついてきたことです。そのあとラーニングのプロセスを経て、仲間や協力者を見つけて、それを広げて、強いチームを作っていった。そうやって事業を生み出してきました。

悔しい思いを持って失敗してきたからこそ、リアルなノウハウと、リベンジの気持ちで新たな解決策を模索してきたメンバーです。そのリベンジとノウハウをぶち込んだのが、共創スキームという流れになります。

③ 全パターンで意識しているのは「熱狂的な経験」

③ 全パターンで意識しているのは「熱狂的な経験」

基本的なパターンは、受託、代理出産、JVの3つです。

各パターンで共通して意識しているのが、熱狂的な経験ができる環境を作ることです。

この熱狂的な経験は、組織間のハレーションやコンプラを気にしすぎると、スポイルされがちです。危ない橋を渡らないように整えていくと、ヒリヒリする場面が全部なくなるからです。ただ、熱狂的な経験がなければ、成功する事業を生むチーム作りは不可能だと僕らは思っているので、その環境づくりを確信をもってやっています。

言い換えると、3つのスキームはどれも、強みと弱みの棚卸しをして互いを補完し合う設計になっています。そのうえで、企画から開発、運用までの過程を対等な関係で乗り越えることで、熱狂的な経験が共有される。スキームの違いは、どこまで踏み込むかの違いでしかありません。

④ 受託は、基本的にお断りしている

④ 受託は、基本的にお断りしている

受託は、新規事業を立ち上げる経験値が少ないパートナー企業から、企画や開発を委託される形です。意向や要件を踏まえたうえで、パートナー企業の代わりに事業を立ち上げます。

このとき、パートナー企業はあくまで評価する立場で、僕らは評価を受ける立場になります。契約を継続させないと新規事業を推進できないため、どうしても市場ではなく、パートナー企業の評価に関心がいってしまいます。

結果として、発注する側と発注される側の関係性のまま、一緒に「うまくいかないかもしれない」というヒリヒリとした経験を積めません。熱狂的な経験もできず、理想とするチームビルディングは期待できなくなります。

成果が短期に出るマーケティングであれば、パートナー企業の評価と市場の評価が一致するため、うまくいく可能性があると思います。ただ新規事業では成果が長期的視点になるため、難しい。だからアルチェコでは、基本的にこの形態はお断りしています。

⑤ 代理出産とJVが解いているのは、同じ閉塞感

⑤ 代理出産とJVが解いているのは、同じ閉塞感

代理出産とJVは、社内事情や既存ビジネスの観点にとらわれて、パートナー企業が持つアセットを十分に活かしきれていない状況を打破するスキームです。

パートナーは中期経営計画をもとに、自社の持つブランド、販売チャネル、技術アセットを棚卸しします。僕らはインキュベーションの経験や知見というケイパビリティを持ち寄ります。そうすることで、一社では実現できなかったアセット活用の新たな可能性を探ることができます。

ただ、アセット活用をいくら企画しても、それを実現して活用を深化させる開発や運用がなければ、本当の意味で閉塞感は打破できません。

企画から開発、運用の中で、さまざまな困難な状況にパートナーと僕らがともに直面する。白熱した議論を交わして乗り越える。そのヒリヒリとした熱狂的な経験を通じて、チームができあがっていくと確信しています。

⑥ 代理出産 — ビジョンを預かって、事業として産む

⑥ 代理出産 — ビジョンを預かって、事業として産む

代理出産は、パートナーが実現したいビジョンを持ち込み、アルチェコがそのビジョンをアイデアやコンセプトに育てて、事業を産み出す役割を担う共同事業モデルです。

このスキームが求められる背景には、既存事業が成功している企業ほど利害関係者が多く、日々発生するチャンスやリスクへの対応で意思決定が難しくなる、という事情があります。

たとえばプレスリリースひとつとっても、広報部と調整し、役員や関係各所と内容を共有して承認を得る必要があります。スピードだけでなく、発信する内容まで変わってしまいます。

そこで代理出産という形で事業自体をパートナー企業から素早く切り離し、僕らが事業化することで、事業そのものに集中できる環境を確保します。パートナー企業のコアメンバーと共同で検討し、フラットに意思決定することで、純粋な形で最速の事業化が可能になります。

⑦ JV — 組織そのものをゼロから設計する

⑦ JV — 組織そのものをゼロから設計する

JVは、パートナー企業とアルチェコが共同出資で新会社や新組織を立ち上げる、より踏み込んだ共創モデルです。当初から、パートナー企業の当事者意識が強制的に引き出されます。

最大の特徴は、組織そのものをゼロから共同で設計することで、柔軟かつ独立性の高い体制を構築できる点にあります。ガバナンスを利かせながら、既存の企業文化や組織の制約を超えた、自由度の高い事業運営が可能になります。

役割、権限、意思決定プロセスをゼロからデザインできるので、既存事業の部門間調整やコンフリクトを回避できます。各出資者がどのような役割を担い、リスクとリターンをどう分担するかを事前に明確にすることで、実行力を大幅に高められます。

ポイントは、既存事業との「連携」ではなく「分離」を基盤にしていることです。親会社の内部事情や短期的な利益目標に縛られることなく、長期的な成長に向けた戦略を自由に展開できます。

⑧ 現場で使うなら、ハイブリッド型

⑧ 現場で使うなら、ハイブリッド型

最近多いのは、代理出産とJVを組み合わせたハイブリッド型です。スタート時は代理出産で始めて、最終的にJVに至る形です。

立ち上げ時に起きがちなのは、既存事業の部署からの反発、カニバリからくるハレーション、リスクコントロールの観点での遅延です。ハイブリッド型は、これを回避する施策になります。

ステルスでスモールに代理出産という形で事業をスタートし、後の成長段階でJV化する。高速でスタートしたあと、一定期間でPDCAを高速で回します。そして、本当にアセットが有効活用できるのか、ビジョンを実現できそうか、可能性が見えてきた段階で、本格的に追加投資するかどうかを判断します。

⑨ 3つのスキームを、どう選び分けるか

⑨ 3つのスキームを、どう選び分けるか

現場で選ぶときの見方を、整理しておきます。

受託は、パートナー企業の評価と市場の評価が一致する仕事なら成立します。成果が短期に出るマーケティングが典型です。逆に、成果が長期的にしか出ない新規事業では成立しません。

代理出産が向くのは、意思決定のスピードが最大の制約になっている場合です。プレスリリースひとつに広報部との調整と役員の承認が要るような状態なら、事業を外に出したほうが速い。ビジョンは持っているけれど、社内の手続きが重すぎて動けない企業に効きます。

JVが向くのは、当事者意識と体制の自由度を最初から確保したい場合です。ただ、共同出資という形をとる以上、ハードルは高くなります。だからこそ、代理出産で始めて成長段階でJV化するハイブリッド型が現実的な選択肢になります。

⑩ この考え方が効き続ける理由

⑩ この考え方が効き続ける理由

スキームは3つありますが、選ぶ基準はひとつです。ヒリヒリとした熱狂的な経験を、一緒にできる形になっているかどうか。

受託をお断りしているのも、そこが理由です。評価する側とされる側に分かれた瞬間に、同じ不確実性を背負えなくなります。契約の形が、チームの形を決めてしまうからです。

僕らが「できない」を先に認めるのも、同じところに繋がっています。できるふりをしたまま組むと、弱点を見せられなくなる。弱点を見せられない相手とは、困難な状況を一緒に越えられません。互いの弱点までさらけ出して不確実性を越えることでしか、本当のチームは形成されないと思っています。

以上です。

ARC channel

アークチャンネルは、新規事業開発の実践者たちが好き勝手喋るVTRの内容を、スタートアップスタジオの先輩社員の神谷と、大学生インターンの五十嵐がゆるく、まじめに掘り下げていくトーク番組です。\n\n・大企業特有の「新規事業の闇」\n・スタートアップの人材採用や育成の舞台裏\n・AI時代ならではの企画ノウハウ\nなど、『そこまで言っていいんかい!』な新規事業のリアルに切り込みます。

よくある質問

  • 共創とは何ですか?

    共創とは、複数の企業が対等に関わって新しい事業を生み出す進め方です。発注者と受注者の関係ではなく、互いの弱点までさらけ出し、不確実性を一緒に越えることで本当のチームが形成される点が特徴です。

  • 大企業と共創する方法には、どんなパターンがありますか?

    3つあります。企画や開発を委託される「委託」、企業のビジョンの種を預かって事業として育てる「代理出産」、共同出資で新会社を立ち上げる「JV(ジョイントベンチャー)」です。

  • 委託ではなく共創にする理由は何ですか?

    委託だとパートナーが評価する側、こちらが評価される側に固定され、市場ではなく相手の評価に関心が向くからです。同じ不確実性を一緒に背負えないため、熱狂的な経験もチームも生まれません。だからアルチェコでは基本的にお断りしています。

  • 「代理出産」型の共創とは、どういうものですか?

    企業が持つビジョンの種を預かり、事業として育てて世に出す共同事業モデルです。既存事業が成功している企業ほど利害関係者が多く、プレスリリース一本にも広報や役員の調整が要ります。事業を素早く切り離すことで、意思決定のスピードと発信内容の自由度を確保します。

  • JV(ジョイントベンチャー)型は、何が違うのですか?

    共同出資で新会社を立ち上げる、より踏み込んだ形です。役割・権限・意思決定プロセスをゼロから設計できるので、部門間の調整やコンフリクトを避けられます。既存事業との「連携」ではなく「分離」を基盤にしている点がポイントです。

  • 日本の大企業には、どの形が向いていますか?

    代理出産で始めて、成長段階でJV化するハイブリッド型です。既存部署からの反発やカニバリによるハレーションを避けつつ、スモールに始めてPDCAを高速で回し、可能性が見えた段階で本格的に追加投資するか判断できます。