

「身体的アプローチのススメ」という話を、熱がこもって3本も跨いでしまいました。次元まで跨いでいます。今日はその最終章です。
先に一行だけ置きます。点と点が繋がるとは、今やっていることが将来何に繋がるかはその時点では分からないけれど、いつか点が繋がって大きなものを生み出すことがある、という考え方です。スティーブ・ジョブズの言葉として知られています。そして、これは待っていても起きません。
僕はリクルートやCCCなどの大中規模企業で、新規サービスと新規事業開発のビズデブを10年以上やってきました。今はスタートアップの立場で、外から大企業に新規事業の共創を仕掛ける、コーポレートベンチャービルダーの活動をしています。
新規事業開発に携わる方にとって、コネクティングドッツはなんとなく分かるし惹かれる概念だけれど、自分の仕事でどう実現するのかが難しい、というやつだと思います。今日はそれをどうするか、という話をしていこうと思います。
前置きはさておき、本題に入ります。

先に結論を置きます。やることは「プロトタイプネットワークを作る」ことかな、と思っています。
改めてコネクティングドッツを振り返ると、その主張は、時間軸を超えて物事が興るということにあります。過去の取り組みが要因となって、未来に予期せぬプラスの出来事が起こる。
なら論点は、未来に向かって、今、何を現場に埋め込むか、ということになります。それがプロトタイプ、もしくはプレトタイプでもいいので、企画した新規事業を具現化したものを埋め込むべきだ、というのが僕の意見です。

考えるうえで参考になったのは、歴史の研究な気がします。
恐竜の研究でインパクトのある情報は、たぶん化石です。鎌倉時代なら書物とか、絵画とか。
当時の人々が会話や議論をしていた肉声は、現代にまで受け継がれることがありません。あくまで物、アウトプットを通じて影響を及ぼすことになります。

この原理は、新規事業も似ています。
どんなに良い議論や調査をしても、決裁がおりず形にならなかった新規事業は、その後、組織や人が交代したときに受け継がれません。情報として認知されないと思います。
膨大な企画書や資料が残っていても、それを読み込んで、その情報がいく層にも折り重なって、ようやく到達できる思考の結論には、後継者はたどり着けません。

では、何を残せばいいのか。
その事業がマーケットに投下するアプリ、Webサイト、プロダクトを、実際に作ることだと思います。プレトでもプロトでも、モックでも構いません。とにかく直感的に、目指していたサービスが分かるアウトプットを作ることが重要です。

そのうえで、共通項を意識して活動することが、めちゃめちゃ大事だと思っています。たとえば、違うマーケットだけれどビジネスモデルが共通しうる、といったことです。
僕らはいま、マパージュというサービスを展開しています。美容師向けのサービスとして立ち上げたものです。インスタなどSNSの台頭により、旧来は美容室の単位で予約を取っていた業界が、美容師個人の単位で予約を取れるように変わってきました。そこで、予約や決済の機能が備わった個人のハイエンドなHP制作を、スマホひとつで簡単にできるソリューションを作りました。

法人が持つエンドユーザーとの接点を個人に分解する。この分散型のマーケティングが有効な業界は、美容師だけではありませんでした。
プロダクション対デザイナー、司法事務所対弁護士など、集約と分散の対比でパラダイムシフトが起きている領域の注目を、マパージュは結果的に集めました。
ビジネスモデル、必要なファンクション、ステークホルダー。だいたいこのあたりに共通項が見出せる市場は、潜在的に繋がっています。

ここまで書いてきて、コネクティングドッツという言葉の受け取られ方には、ひとつ誤解があると思っています。
いつか点が繋がる、という話は、放っておいても繋がるという意味ではありません。ジョブズの話が振り返りの形で語られているために、受け取る側が「待つ姿勢」として理解してしまいがちなのです。
でも、繋がるのは点があるからです。点を打っていない人のところには、繋がるものがありません。そして点は、頭の中にあるうちは点になりません。外に出して、他人が触れられる形になって初めて点になります。
だから、やることは待つことではなく、埋めることです。

いつか時が来て、そのネットワークの中で誰かが新規事業を検討し出したときに、作ったプロトタイプが化石的に発見されます。
これはなんだ、いいじゃないか、誰が作ったんだ。そう発見されるように、共通項が仮説できるフィールドの現在に、アウトプットを埋め込んでおきます。
そうすることで、未来のコネクティングドッツの発生確率を高めることができると考えています。

3本跨いだ話を、新規事業の観点で整理し直します。
狭義には、新規事業には画期的な発想が必要です。これに対しては、仕事と関係ないことに触れる時間を持った予定表を作る、得た情報を深く観察して人に言いたくなるような発見をする、何かに集中しながらぼーっとする、というナレッジを述べました。
広義には、新規事業はうまくいかないことが多いので、長期戦の準備が必要です。これに対しては、企画はアウトプットするまでをひとつの取り組みにする、すなわち新規事業にはクイックにものづくりができる体制が必須である、共通項を見出せるフィールドを意識して活動する、というナレッジになります。

これらをなぜ身体的アプローチで括ろうとしているかというと、どちらもネットワークと発火のモデルだと思うからです。
やりあての方は、アイデアが生まれる際の脳神経の発火モデルで説明したので、イメージしやすいと思います。一方でコネクティングドッツの方も、ビジネスモデルなどの共通項で結ばれる潜在的なネットワークを、プロトタイプという発火で顕在化させる。なんとも、脳神経系と同じモデルに感じるのです。
どこまでいってもコントロールしきることはできない領域です。ただ、両方とも同じモデルだと理解して、愚直にトライし続ければ、ブレイクスルーの確率は今よりも上げられるんじゃないか。そういう話でした。
その手の話がお好きな方は途中で気づいたかもしれませんが、今回のテーマはSBNR(スピリチュアル・バット・ノット・レリジャス)、宗教的ではないがスピリチュアル、と訳される、2020年あたりから勃興してきた考え方に結構属すると思います。ただSBNRはマインドに比重を置いて語られることが多い印象もあって、僕個人は、もっとビジネス価値に直結できるスキームや行動様式として思考したいという思いが強いです。新規事業共創の活動は、その最前線の実験場のようにも感じています。
最後に余談ですが、この話、もっと話が上手い人を巻き込んで、いつか本にしたいんですよね。
賛同くださる方、出版業界につてがある方、ぜひご連絡ください。どこかに化石を埋めておきます。
以上です。
ARC channel
アークチャンネルは、新規事業開発の実践者たちが好き勝手喋るVTRの内容を、スタートアップスタジオの先輩社員の神谷と、大学生インターンの五十嵐がゆるく、まじめに掘り下げていくトーク番組です。\n\n・大企業特有の「新規事業の闇」\n・スタートアップの人材採用や育成の舞台裏\n・AI時代ならではの企画ノウハウ\nなど、『そこまで言っていいんかい!』な新規事業のリアルに切り込みます。
スティーブ・ジョブズが語った、今やっていることが将来何に繋がるかはその時点では分からないけれど、いつか点が繋がって大きなものを生み出す、という考え方です。コネクティングドッツとも呼ばれます。ただし、待っていても起きません。
未来に向けて、今の現場にプロトタイプを埋め込むことです。参考になるのは歴史の研究で、当時の人の肉声は受け継がれず、化石や書物といった物だけが残ります。新規事業も同じで、決裁がおりず形にならなかった企画は、組織や人が代わった時点で受け継がれません。
膨大な企画書が残っていても、それを読み込み、情報が何層にも折り重なってようやく到達できる思考の結論には、後継者はたどり着けないからです。プレトでもプロトでもモックでも構いません。直感的に、目指すサービスが分かるアウトプットが要ります。
あります。美容師向けに立ち上げたマパージュというサービスは、結果的にプロダクション対デザイナー、司法事務所対弁護士など、集約と分散のパラダイムシフトが起きている領域の注目を集めました。ビジネスモデルやステークホルダーに共通項がある市場は、潜在的に繋がっています。
脳内のニューロンが発火するように、人と人のネットワークの中で偶然の接続が起きて生まれると考えています。共通項で結ばれた潜在的なネットワークを、プロトタイプという発火で顕在化させる。コントロールしきれない領域ですが、確率は上げられます。