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2025.7.2.WED

社内政治とは?努力が成果にならない場所の話

新規事業しくじり先生:事業をつぶされないためのノウハウとは?

自己紹介をアルチェコのメンバーの真似で始めようとしたのですが、みんなすごくスカして、一点を見つめて首も動かさずに話すので、私は自分のやりやすいやり方でいこうと思います。

先に一行だけ置きます。社内政治とは、組織の中で誰が何を通せるかを決めている、公式の制度とは別の力学のことです。新規事業では、これが事業の中身より強く働きます。

私は大企業、いわゆるJTC(Japan Traditional Company)に所属しています。今日は、大企業の新規事業で実際に起きたことを紹介しながら、事業を潰されないための備えについて話していこうと思います。

前置きはさておき、本題に入ります。

① 異動してみたら、経験者が一人もいなかった

① 異動してみたら、経験者が一人もいなかった

一つの部署にいると、自分の成長も感じられなくなり、キャリアも不安になってきます。人材の流動性が高まり、生成AIなどデジタルで世の中が大きく変わっていく中で、行動することはすごく大事です。

そう考えて新規事業の部署に異動し、これで自由に新規事業を進められると思いました。現実はそう甘くありませんでした。

まず、その部署の中に、実際に自分で新規事業をやったことがある人が誰もいませんでした。進め方を知っている人もいなければ、何を新規事業として選ぶのかという選定基準も曖昧でした。

② 一貫性のない評価が、しばらく続く

② 一貫性のない評価が、しばらく続く

アイデアや企画を考えても、上司や周りから一貫性のない評価をされます。次にどんなアクションを取れば前に進めるのか、具体的な指示も出てきません。それがしばらく続きました。

Z世代に対してデジタルで新しい顧客接点を作るアイデアを出したときは、Z世代の行動特性を把握していない、SNSも使っていない上司世代に、理解を得られませんでした。

構造自体は仕方がないと思います。問題は、運営する部署の人たちが、自分たちは新規事業のことを何も知らないのに、知っているふりをしたり、知っていると錯覚してしまうことです。

そして、既存の考え方や自分の過去の成功、やり方を押しつけて、何も新しいことが生まれないパターンになります。1年間活動しても何も生まれず、いいアイデアが出てこないことが問題だと言って、運営側が企画者側に原因を押しつけるまでがセットです。

余談ですが、某デジタル企業の役員の中には、令和になってもスマホを持たずガラケーを使っていて、その人が新規事業を担当している、という都市伝説を聞いたことがあります。

③ 恵まれてはいなかったが、企画は形になった

③ 恵まれてはいなかったが、企画は形になった

そんな環境でしたが、企画のターゲットになる人たちにインタビューをしたり、実現に向けて支援してくれる企業の方たちを巻き込んだりするうちに、企画書からモックアップ、プロトタイプへとサービスが具体化していきました。

顧客の中でも企画が課長から部長、部長から本部長へとエスカレーションされていきます。そうすると社内の本気度が変わり、コミットメントを得られて、PoCまでこぎつけました。

④ 社外で評価された途端、目の色が変わる

④ 社外で評価された途端、目の色が変わる

ここで起きたのが、手のひら返しです。

社内で上申しても一向に承認されず、進まない。ところが社外で一定の評価、特に政府や大口顧客からのお墨付きをもらってくると、目の色が変わるというやつです。社内で独断と偏見で提案を却下していた人が、社外からいい反応があった途端に慌てて意見を変え、それいいね、と言い出します。

顧客を見つけるという新規事業の本質が評価されているように一見見えますが、そうではありません。実際は、社外に迷惑をかけてはいけないという、見栄や体裁を守るための行動の結果です。評価軸が変わったのではなく、守るべき対象が社内から社外に移っただけです。

ただ、残念ながらこれが現実だったりもします。だから、本質的ではないことも、時には大企業の新規事業の推進には必要なテクニックになります。順番として、社内を説得してから外に出るのではなく、外の評価を取ってから社内に戻る。覚えておいて損はないと思います。

⑤ サービスが出て、全員がサポーターになった

⑤ サービスが出て、全員がサポーターになった

半信半疑で実現性を疑っていた部署の人たちも、実際にサービスが提供され、売上が増えていく事実を目の当たりにすると、態度が変わりました。完全にサポーターになってくれるところまで、環境が変わったのです。

周りも味方につけて、あとはサービスを拡大していくだけ。そう信じて疑いませんでした。

ここまでは、良い話です。

⑥ そして、隕石が落ちる

⑥ そして、隕石が落ちる

軌道に乗ったと思ったところで、事業は終わりました。

理由は、社長交代と経営方針の変更に伴う組織改革で、所属していた5000人の組織が解体されたからです。

事業の中身が否定されたわけではありません。売上が落ちたわけでも、顧客が離れたわけでもない。組織そのものが無くなったので、その中にあった事業も一緒に消えました。

システム開発で言うところの、アジャイルでもウォーターフォールでもなく、メテオホールというやつです。隕石を落として、非論理的にプロジェクトを粉々にする。

そして、この隕石には方向性があります。経営層にとって、売上のある既存事業は大事です。売上のない新規事業は、潰しやすい。だから新規事業のほうに落ちてきます。

⑦ 承認プロセスに8ヶ月、振り回される

⑦ 承認プロセスに8ヶ月、振り回される

組織が解体されたあと、事業継続のために申請と承認のプロセスが用意されました。私の場合は常務のサポートもあり、正式な承認を取り付けることができました。

ただ、その無意味な承認プロセスに8ヶ月も振り回されている間、事業開発に注力することができませんでした。継続そのものは認められても、8ヶ月ぶんの停滞は戻ってきません。巻き返しが難しい状態になっていました。

これは新規事業に限らず、大企業のあるあるだと思います。

会社には、古い施策や体制をクローズして、新しい施策と体制を構築するバイオリズムがあります。中期経営計画の切り替わりや、経営体制の変更のタイミングです。ここを押さえておかないと、仮に事業がうまくいっていても、まったく関係のない理由で継続が難しくなることは、よくあります。

⑧ 順調になると、今度は功績が移っていく

⑧ 順調になると、今度は功績が移っていく

もうひとつ、覚えておくといいことがあります。

数字が順調に伸びていくと、途端に「あれ、これオレがやってるんだよね」と自分の功績にする人が増えます。あれだけ反対していたのに、です。

腹は立ちますが、これも見方を変えると使えます。功績を主張したい人が増えるということは、その事業を守りたい人が増えるということでもあるからです。事業の味方は、必ずしも理解者である必要はありません。

前の章で書いた手のひら返しと、構造は同じです。人は事業の中身ではなく、自分の立場から判断している。そこに怒っても仕方がないので、立場が事業に有利に働く状態を作るほうが早い。

⑨ 相手にしている不確実性が、2つある

⑨ 相手にしている不確実性が、2つある

そう考えると、新規事業開発と社内政治という、2つの不確実性を相手にしなくてはいけません。

大企業の新規事業開発は、スタートアップよりも難易度が高いかもしれない、と思います。

⑩ 備えるなら、逃げ場を先に作っておく

⑩ 備えるなら、逃げ場を先に作っておく

今回の事例に、万能な事前準備や対策はなかなかないかもしれません。隕石は予測できないからです。

そのうえで一つ挙げるなら、所属組織がなくなってしまっても継続できる逃げ場所を、別の部署や社外にあらかじめ作っておくことです。そして、いつでもすぐに実行に移せるようにしておく。

具体的には、社外のパートナーとの関係がそれにあたります。前の章で書いたとおり、社外の評価は社内の判断を動かす力を持っています。同じ理屈で、社外に事業の居場所があれば、社内の組織が消えても事業そのものは消えません。逆に、すべてを社内で完結させている事業は、組織と運命を共にします。

もう一つは、評価の置き場所を分散させておくことです。私の場合、社内では相手にされなかった企画が、社外で評価された途端に社内の扱いが変わりました。つまり、評価は社内だけで決まるものではない。そこに気づいていれば、社内の風向きが変わったときの打ち手が残ります。

努力が成果にならない世界で事業を守るには、事業そのものを前に進める力とは別に、この備えが要ります。今回のようなエピソードを今後も共有して、新規事業に関わる方の参考にしていただけたらと思っています。

以上です。

ARC channel

アークチャンネルは、新規事業開発の実践者たちが好き勝手喋るVTRの内容を、スタートアップスタジオの先輩社員の神谷と、大学生インターンの五十嵐がゆるく、まじめに掘り下げていくトーク番組です。\n\n・大企業特有の「新規事業の闇」\n・スタートアップの人材採用や育成の舞台裏\n・AI時代ならではの企画ノウハウ\nなど、『そこまで言っていいんかい!』な新規事業のリアルに切り込みます。

よくある質問

  • 社内政治とは何ですか?

    組織の中で誰が何を通せるかを決めている、公式の制度とは別の力学のことです。新規事業では、これが事業の中身より強く働きます。新規事業開発そのものの不確実性と、社内政治の不確実性という、2つを同時に相手にすることになります。

  • 軌道に乗った事業が、突然なくなることはありますか?

    あります。売上が落ちたわけでも顧客が離れたわけでもないのに、社長交代と経営方針の変更に伴う組織改革で、所属していた5000人の組織ごと解体された事例があります。組織が無くなれば、その中にあった事業も一緒に消えます。

  • 「メテオホール現象」とは何ですか?

    アジャイルでもウォーターフォールでもなく、隕石を落として非論理的にプロジェクトを粉々にする、という意味の呼び名です。しかもこの隕石には方向性があります。経営層にとって売上のある既存事業は大事で、売上のない新規事業は潰しやすいからです。

  • 社内で評価されないのに、社外で評価されることはありますか?

    あります。社内で上申しても進まなかった企画が、政府や大口顧客からお墨付きをもらった途端に扱いが変わります。評価軸が変わったのではなく、守るべき対象が社内から社外に移っただけです。社内を説得してから外に出るのではなく、外の評価を取ってから社内に戻る順番が有効です。

  • 自分の事業をつぶされないためには、どうすればいいですか?

    所属組織が無くなっても継続できる逃げ場所を、別の部署や社外にあらかじめ作っておくことです。社外に事業の居場所があれば、社内の組織が消えても事業は消えません。すべてを社内で完結させている事業は、組織と運命を共にします。