

僕の会社では、従業員の半数以上が、正式にADHDです。オンライン上でADHD診断をした際に、やって来ない半数、違う診断をやってしまった半数という、とてつもない結果を得ています。ADHDの過集中や特筆する強みを活かしながら、なんとか事業活動が成立している、変わった会社です。
先に一行だけ置きます。アクションプランとは、ゴールまでにやるべき行動を、実行できる単位まで分解した計画のことです。そして、細かく分解するほど、事業は遅れます。
自己紹介をすると、僕は株式会社ARCHECOという15人規模、売上高7億円ちょっとの小さなコンサルファームの創業者です。キャリアとしては、大手の家電メーカーにエンジニアとして就職して、独立系コンサルファームを経て、コンサルファームを設立して10年くらい経営しています。
そんな僕らとは正反対の、キラキラした優等生タイプの一流企業の方々と新規事業を共創する時に、直面する大きなカルチャーギャップが存在します。今日は、そのギャップを、ナードサイドの僕らがどのように感じているか、偏見たっぷりに話していこうと思います。
前置きはさておき、本題に入ります。

まず、事業において一番重要なことは、結果です。バリューアップできたとか、収益が得られるようになったとか、黒字化したとか、事業を前向きに存続することができるだけの結果が全てだと思います。
こう言ってしまうと、当たり前に聞こえると思いますが、実際は、それが当たり前ではありません。例えば、成功したら途中過程は企業倫理的に問題なければなんでもいい、というスタンスに立っている大企業は、なかなか無いのかなと思います。

もう少し論点を絞って具体的にいうと、大企業は、成功よりも説明責任を果たすことに重きを置く傾向にあると思います。説明責任を過度に果たすという行為は、しばしば事業開発の遅延につながります。
そして、遅延するということは、新規事業の成功において、最も重大なリスクになります。
ここからは、その遅延に直結する2つの行動を話していこうと思います。

まず一つ目が、「リストアップ詐欺」です。これは僕が勝手に名付けた特殊詐欺の名称ですが、実行力のない優等生タイプの方は、とにかくリストアップしたがります。これは詐欺なんじゃないかと疑ってしまうリストを、いくつか具体的に話していこうと思います。
1つ目は、「過度に分解されたアクションプラン」です。たとえば「若年層向けのファッションを取り扱うECサイト事業」のSWOT分析をしようとして、こんなアクションプランを抽出します。
強みなんて、社内の共通認識であれば良いですし、主観で良いのに、無意味に細かく、無駄に精度を高めたり深掘ったりします。そして、社員3人と5分も会話すれば十分な内容を、1週間かけて実施して、無駄に難しくします。
こういうことをやる方に限って、自分が見過ごしてしまったアクションプランに対して、こう言います。「アジャイルに行こう」「リーンにやろう」。
どうせなら、朝どっちの足で歩き出すか、ドアをどっちの手で開けるのかまで定義してほしいです。

2つ目は、「0に近い可能性の選択肢」です。たとえば、AとBの2択を考えたら良い時に、ほぼ検討することが無意味な3択目をテーブルに並べて、比較検討するようなイメージです。
具体的にいうと、全然アクティブユーザ数がいない状態で、さっきの「若年層向けのファッションを取り扱うECサイト事業」の次のビジネス展開を検討するとします。子供服やスポーツウェアに商品ラインナップを拡大してターゲットユーザ層を広げるとか、洋服を購入するのではなくサブスクでレンタルしてもらおうというアイデアが検討の土俵に上がるのは、とても理解できます。
でも、広告主を探して広告収益を得ようとか、データを販売してデータビジネスをやろうといった、ユーザが全然いないのにどうやってやるの、というようなビジネスの可能性を検討の土台にあげて、それを深掘ったり検証したりして、無駄にプロジェクトの進行を妨げます。
自由な発想で、広い視野で物事を考えることはとても重要だと思いますが、可能性を網羅的に検討することは、時間の無駄だと思います。

3つ目は、「クレーマー的視点の課題リスト」です。これは、僕が社会人1年目の時に、実際に家電メーカーであったことです。製造における課題を解決しよう、週に一度、改善案を提出してください、という取り組みがあって、みんな、本来課題のないことに対して課題を見出して、それを無理やり改善してKPIを達成するということをやっていました。
課題発見に対して積極的になることは重要だと思いますが、誰も課題だと感じていないことに対して課題を見出すのはクレーマーと同じですし、それに向き合って課題解決して成果だと主張するのは、自作自演でしかないと思います。

遅延につながる詐欺の二つ目として、「途中経過詐欺」が挙げられます。この特殊詐欺は、先ほどの「過度に分解されたアクションプラン」を出してくるリストアップ詐欺の主犯が、よく起こす再犯と言えます。
要は、本来分解して実行する必要がなかったタスクを、「今週はこれを完了しました」と、仰々しく美しいプレゼン資料で発表するやり口です。これによって、チームの中では、この人めっちゃ仕事完了するな、毎週しっかり進捗させているな、という印象操作を行いますが、実際はゴールに向かってほとんど進捗していない状況を生み出します。
また、これが定例会議と相まって、1週間に一度、小さなアクションを実行し報告するというリズムを作ります。ほとんど進捗しないけど、綿密な計画と、小さな小さな進捗を100倍くらいの成果のように膨らませたドラマチックな報告を、1週間に一度やるだけの、実行力のないチームのリズムです。

また、彼らは、リーンキャンバスとか、カスタマージャーニーマップとか、SWOT分析とか、とにかくテンプレートを多用します。これらは、思考する際のフレームワークとしてはとても優れている反面、アウトプットを仰々しくドラマチックに見せるテンプレートとしても機能します。テンプレートが埋められると、何か重大なプロセスを完了したような雰囲気を演出することができるのです。
例えば、ユーザをどう獲得して、どうやって利用してもらって、どうやって思い出してもらって、どうやって再利用してもらうかは、本来、箇条書きの4行で定義できれば良いことです。それが、そのシーンを想起する写真や、ストーリー性、感情の動き、その時のタッチポイントを備えた、ポスターのような美しいグラフィックのカスタマージャーニーマップに記述されます。
グラフィックレコーディングとかも、まさに絵画です。大企業によくある、スタートアップっぽいカフェのような空間を美しく彩る、絵画のような効果は高いのかもしれません。
集中力のないADHDからすると、ドラマチックなプレゼンを聞いているうちに集中力が切れ、もうなんでもいいからゴールに向かってくれよという感じなのですが、このタイプの優等生は、慎重さ・緻密さブランディングにより、ADHDサイドに指摘をする隙を与えません。
結果的に、3時間で実行して結果を得られることを、ゴールまでを4つのステップに分解し、毎週定例会議で報告しながらみんなに意見を求めて進むので、1ヶ月かかってしまうことが多々あります。

この詐欺を、なぜ優等生タイプの人がよくやるのかということを考えてみました。
それは、大学時代に、よりよく学ぶことよりも、良いレポートを出すことで点数がもらえるという文化や、就活時代に、面接官に対して積極的に質問した方が心象が良いという文化がもたらした弊害なのかなと思います。
要は、学びという最終ゴールに対して、レポートをうまく書くという評価ハックや、企業に対して本当に興味や熱意を持つというゴールに対して、やる気をアピールするために上手に質問するという評価ハックを、一流企業に入っても同じスタンスで繰り返しすぎて、本来の目的を見失いがちになることが原因な気がしています。

一方で、実態として、本当の優等生は、大企業をハックする際にこの詐欺を上手に使って、上司の意思決定を促進し、大企業を手玉に取って、真の意味で事業を推進していたりします。
問題なのは、優等生タイプに見えて、本当は優等生ではない人なのだと思います。
最後に余談ですが、優等生の特殊詐欺の話ばかりしていたら、先日、大手の外資系配送会社を装ったメッセージが届き、不注意な僕は、荷物受け取りのために個人情報と、追加料金の決済のためのクレカ情報を入力してしまい、クレジットカードが不正利用されてしまいました。
本日は、カード再発行の手続きに追われそうです。アクションプランをリストアップして、慎重にカードを復旧しようと思います。
以上です。
ARC channel
アークチャンネルは、新規事業開発の実践者たちが好き勝手喋るVTRの内容を、スタートアップスタジオの先輩社員の神谷と、大学生インターンの五十嵐がゆるく、まじめに掘り下げていくトーク番組です。\n\n・大企業特有の「新規事業の闇」\n・スタートアップの人材採用や育成の舞台裏\n・AI時代ならではの企画ノウハウ\nなど、『そこまで言っていいんかい!』な新規事業のリアルに切り込みます。
アクションプランとは、ゴールまでにやるべき行動を、実行できる単位まで分解した計画のことです。ただし新規事業では、細かく分解するほど事業は遅れます。分解そのものが実行の代わりになってしまうためです。
過度な分解は逆効果です。たとえば自社の強みは社内の共通認識であれば十分で、主観で構いません。それを社員3人と5分会話すれば済む内容なのに、ワークショップやデータ分析に分解して1週間かけると、精度は上がらないまま時間だけが失われます。
実行力のない優等生タイプが、実行の代わりにリストを作り続けることを指した呼び名です。過度に分解されたアクションプラン、可能性がほぼ0の選択肢の比較検討、誰も課題だと思っていないことを課題として並べたリストの3つが典型です。
「途中経過詐欺」が起きているためです。本来分解する必要がなかったタスクを、今週これを完了しましたと仰々しい資料で報告することで、仕事が進んでいる印象を作ります。実際にはゴールに向かってほとんど進んでいません。3時間で結果が出ることが、4ステップに分解され1ヶ月かかります。
思考のフレームワークとしては優れています。問題は、アウトプットを仰々しく見せるテンプレートとしても機能してしまう点です。枠が埋まると重大なプロセスを完了したような雰囲気が出ます。箇条書き4行で足りる定義が、美しいグラフィックに置き換わっていないかを見てください。