
子どものころ、夏休みの自由研究で豆を育てました。発芽率を上げる方法を調べる、という題目です。
水の量を変え、土を変え、温度を変え、30粒ほど蒔きました。 芽は、よく出ました。研究としては大成功です。
そして、全部枯らしました。
芽が出たあとに何をすればいいかを、私は一度も調べていなかったからです。発芽までは全部書いてあったのに、その先のページを開いていなかった。
先に一行だけ置きます。PMFとはプロダクトマーケットフィットの略で、良い市場に、その市場を満足させられるプロダクトがある状態のことです。
題材は、大企業が作った新規事業創出の会社です。外部の会社と組み、100億ほどの資本を入れて設立されました。
前置きはさておき、本題に入ります。
今日は、その会社が年間20〜30本の新規事業を生み出して、漏れなく全滅した話をしていこうと思います。
① 教科書どおりに、数を打つ


新規事業の課題の一覧をすでにご存じの方は、② そのとおりに進めて、全滅するから読み進められます。
新規事業の課題は、フェーズごとに変わる
新規事業の課題を「人がいない」「金がない」でまとめると、手が打てません。いま自分がどの段階にいるかで、出てくる課題も、効く対策も変わります。
| フェーズ | 主に出てくる課題 |
|---|---|
| 社内リソース | 人材・予算・ノウハウが揃わない |
| 事業計画 | アイデア、顧客理解、市場規模、差別化、社内合意 |
| 開発 | 範囲の肥大、反応の遅さ、部門をまたいだ連携 |
| 市場投入 | 出す時期、最初の顧客、KPIと追跡 |
| 収益化 | 利益計画、価格と収益モデル、撤退の基準 |
順番に出てくるとは限りません。前の段階で片づけ損ねた課題が、次の段階で別の顔をして出てくるのが実際のところです。
社内リソースの課題1|必要な人材が確保できない
既存事業を回している人は動かせず、新規事業の経験がある人は社内にいない。兼務で立ち上げると、締め切りのある既存業務が必ず優先されます。
打ち手は、人数を増やすことではなく「その人の時間の何割を、いつまで使えるか」を明文化することです。割合が決まっていない兼務は、実質ゼロになります。
社内リソースの課題2|予算を確保できない
新規事業は、成果が出るまでの期間が読めません。そのため、既存事業と同じ基準で投資対効果を求められると通りません。
効くのは、総額ではなく段階で区切って承認をもらう形です。「ここまで確かめられたら、次の予算を出す」という条件つきにすると、決裁する側のリスクが小さくなります。
社内リソースの課題3|社内にノウハウと経験が蓄積していない
前にやった新規事業の学びが、担当者の頭の中にしか残っていない状態です。担当が異動すると、次の案件はまた白紙から始まります。
残すべきは成功事例ではなく、「何を確かめて、何が外れたか」の記録です。成功事例は条件が違うと使えませんが、外れ方の記録は次でも効きます。
事業計画の課題1|アイデアが出てこない
会議室で「何かないか」と問うても出ません。アイデアが出ないのではなく、出す枠と、出す材料が用意されていないのが実態です。
材料は3か所から取れます。顧客に会って聞いたこと、自分が実際に困ったこと、先行しているプレイヤーがやっていること。
事業計画の課題2|顧客の困りごとを深掘りできていない
「◯◯が不便だと思う」で止まっていると、そのあとに作るものが誰にも刺さりません。
確かめるのは「困っているか」ではなく「いま、どうやって済ませているか」です。既に別の方法で済ませているなら、そこから乗り換える理由を作る必要があります。済ませる方法が無いなら、そもそも困っていない可能性があります。
事業計画の課題3|市場ニーズをつかめない・市場規模を大きく見積もりすぎる
市場規模を「業界全体の金額」で出すと、実態と何桁もずれます。対象になりうる全体、自社が届く範囲、現実に取れる範囲を分けて書いてください。
分けて書くと、資料の見栄えは落ちますが、判断はできるようになります。
事業計画の課題4|仮説に固執して、変えられない
時間をかけて作った計画ほど、外れた事実を受け入れにくくなります。「まだ伝え方が悪いだけだ」と、検証ではなく説得に向かっていきます。
先に「何が起きたら仮説を捨てるか」を書いておくのが、いちばん確実な対策です。起きてから決めようとすると、決められません。
事業計画の課題5|差別化の理由を作れない
似たサービスが既にある場合、「機能が多い」「安い」は差別化になりません。どちらも真似できるからです。
見るべきは、自社にあって他社に無い資産です。既存事業の顧客基盤、業務の中に蓄積したデータ、許認可、現場の運用ノウハウ。真似に時間がかかるものだけが、差別化として残ります。
事業計画の課題6|社内の合意が取れず、関係者に温度差がある
起案は通ったのに、協力を頼むと止まる。これは反対されているのではなく、相手の評価に繋がっていないだけのことが多いです。
頼み方を「新規事業のため」から「その部署がいま困っていることの解消」に変えると、同じ依頼でも通りやすくなります。
開発の課題1|作る範囲が膨らむ
最小限で出すつもりが、社内レビューのたびに機能が足されます。「これも無いと使えない」という指摘は、たいてい正しく、そして止まりません。
効くのは、機能を削る交渉ではなく「今回の版で確かめること」を1つに決めることです。それに要らない機能は、正しい指摘でも今回は入れない、と言えるようになります。
開発の課題2|利用者の反応が返ってくるのが遅い
作り終えてから見せる形にすると、間違いが分かるのが、直せない段階になってからになります。
動くものを、短い間隔で、実際に使う人に触ってもらう。それができない事情(現場が忙しい、対象が社外)があるなら、その事情のほうを先に解く必要があります。
開発の課題3|部門をまたいだ連携が進まない
情報システム、法務、営業、現場。新規事業はどこか1部署では完結しません。
止まるのは、たいてい「誰が決めるか」が決まっていないときです。会議体を増やすより、判断する人を1人決めるほうが速く進みます。
市場投入の課題1|出すタイミングを判断できない
「まだ足りない」と「もう出すべきだ」が社内で割れます。
判断できないのは、出す条件を決めていないからです。完成度で決めようとすると永遠に決まりません。「何が分かったら出すか」で決めてください。
市場投入の課題2|最初の顧客が取れず、KPIも決まっていない
出したあとに、誰にどう届けるかを考え始めると止まります。最初の顧客は、作る前から名前で分かっている状態が理想です。
KPIも同じで、出す前に「何を数えるか」を決めておかないと、出たあとに都合のよい数字を探すことになります。数えるのは、売上ではなく、その手前の行動(使い続けた人の数、再訪、紹介)から始めます。
収益化の課題1|利益計画と、価格・収益モデルを決められない
価格を決められない理由は、たいてい「誰の、どの予算から出るお金か」が決まっていないことです。
既存の何かを置き換えるなら、置き換える対象の費用が上限になります。新しく増える支出なら、承認する人が別にいます。金額より先に、出所を決めてください。
収益化の課題2|撤退とピボットの基準が無い
新規事業でいちばん重い課題がこれです。撤退基準を決めていないと、事業は止まらず、判断だけが先送りされます。
決めるのは3点です。
- いつ — 判断する日を、着手前にカレンダーへ置く
- 何をもって — 続ける条件を、数えられる形で1行書く
- 誰が — その日に判断する人を決めておく
「確証が足りないから、もう少し様子を見る」を許さない形にしておくことが要点です。足りないまま判断する日として、先に固定します。
大企業の新規事業に特有の課題
社内の構造から出てくるもので、担当者の努力では動かせない部分があります。
- ゴールが示されない — 何をもって成功とするかを、経営層が定義していない
- 数年周期の異動 — 事業が立ち上がる前に担当が変わる
- 多段階の承認 — 前例のないことほど、通す段数が増える
- 資源が既存事業に偏る — 人も予算も、確実に回収できるほうへ流れる
- 評価軸が曖昧 — 売上が立たない期間の働きを評価する仕組みが無い
- 撤退しにくい空気 — 「失敗が許されない」より「簡単にはやめられない」ほうが実害が大きい
最後の1つが、いちばん静かに効きます。やめる判断ができない組織では、次の事業に回すはずだった人と予算が、止まった事業に張り付いたままになります。
課題の見つけ方|3つの視点
課題は待っていても出てきません。次の3方向から取りにいきます。
- 顧客 — 実際に使う人に会い、いまどう済ませているかを聞く
- 社内 — 使える人材・予算・データ・販路を棚卸しする
- 外部 — 法制度、技術、先行プレイヤーの動きを整理する
1つ目を飛ばした課題設定は、ほぼ外れます。社内会議で出た課題は、社内の人の課題であって、顧客の課題ではありません。
課題の整理に使うフレームワーク
よく使われるのは次の8つです。どれも整理の道具であって、答えを出す道具ではありません。
| 型 | 何が見える |
|---|---|
| PEST分析 | 外部環境の変化(なぜ今なのか) |
| SWOT分析 | 内と外を突き合わせた打ち手 |
| 4C分析 | 買い手の側から見た価値 |
| ペルソナ・ジョブ理論 | 誰が、どんな用事で使うか |
| VRIO分析 | その強みが真似されにくいか |
| ポジショニングマップ | 既存の選択肢の中での立ち位置 |
| バリュープロポジションキャンバス | 提供物と困りごとの噛み合い |
| リーンキャンバス | 事業の仮説を1枚に |
使う順番は「いま何が分かっていないか」で決めます。全部を埋める必要はありません。
外部のリソースを使うという選択肢
社内で足りないものを、外から入れる手もあります。
- アライアンス/共創 — 販路や技術を持つ相手と組む。自社に無い資産を借りられる
- 外部の支援会社 — 進め方の型と、他社での外し方を持ち込んでもらう
- プロ人材・業務委託 — 特定の工程だけ、経験のある人に入ってもらう
どれを使う場合も、「判断する人」は社内に置いたままにしてください。判断ごと外に出すと、学びが社内に残りません。
教科書には、こう書いてあります。新規事業は打率が低いので、試行回数を増やせ。
そのとおりに設計されていました。
→ 100億ほどの資本を入れて、新規事業創出の会社を作る
→ 年間20〜30本の新規事業を生み出す
→ 小さく作って、市場に当てる
数は出ました。 起案も通り、チームも立ち上がり、プロダクトも形になります。
ここまでは、教科書どおりです。
この記事の後半で扱うのは、上の一覧に載っていない課題です。人も予算も付き、数を打つ仕組みも整い、フェーズごとの手当てもされていたところで、それでも止まる場所があります。
② そのとおりに進めて、全滅する

ところが、結果はこうでした。
「どちらの会社の人材も、プロダクトアウトはできるけど、PMFや黒字化まで押し上げる1-10フェーズの死の淵で、漏れなく全滅しました。その全滅活動を年間数10億かけてやっているのを横目で見ていました。」
漏れなく全滅しています。 しかも、その全滅活動に年間数十億が使われている。
そして、記録にはこう書かれています。
「PMFや黒字化まで押し上げる1-10フェーズの死の淵で一様に死ぬチームが、100回試行して100回死んだと言う結果をもたらしたのです。」
100回試行して、100回死にました。
打率が低いのではありません。打率が0です。
③ そして、死ぬ場所が毎回同じだと気づく

回数を重ねるうちに、はっきりしたことがあります。死ぬ場所が、毎回同じでした。
→ 0→1は、通る
→ PMFや黒字化まで押し上げる1→10のフェーズで、一様に死ぬ
「死の淵」と呼ばれていました。
起案の質の問題ではありませんでした。 質が悪いなら、死ぬ場所はばらけるはずです。良いものは先へ進み、悪いものは早く死ぬ。ところが実際は、良し悪しに関係なく、同じ場所で止まっていました。
同じ場所で全部が止まるなら、原因は事業の側ではなく、通り道の側にあります。
分布を数字で置くと、こうです。0→1を通過した件数は年間20〜30件、1→10を通過した件数は0件。 打率が低いのではなく、特定の1区間で全部が止まっています。
④ 原因は「0→1にしか予算が付かない」こと

原因を一つに絞ると、これでした。
0→1は小さい金額で承認できます。1→10は目立つ金額になります。
そして、大企業の中では目立つ金額の失敗が、責任問題になります。 実は、この非対称そのものが仕組みとして働いています。
結果、こうなります。
→ 小さく試す → 通る
→ 伸ばす投資を仰ぐ → 審査が重くなる
→ 重くなる → 実質的に通らない
背景にあるものには、名前が付いていました。
「おそらくその理由は、目立つ大きな失敗死亡説、小さな失敗0理論によるものだと考えられます。」
小さく失敗するぶんには、誰も責任を問われません。だから小さく試すことだけが繰り返され、伸ばす決断だけが誰の手にも渡らない。
「本来、大きな予算を確保して、横綱相撲で戦えば勝ちやすかったのに、大きな予算で失敗すると、その責任を問われる」
一様なやり方でスタジオを作った結果が、0%を100回でした。
掛け算の一項が0なら、試行回数を掛けても0のままです。
⑤ 直してみる — ステージを割って、自動で次へ渡す

やることは3つです。
1. 1→10をもがくのに十分な予算を、最初に確保する。
0→1の予算しか無い状態で始めると、必ず死の淵に落ちます。入口ではなく、渡る先の板を先に架けます。
2. 複数ステージに分割し、クリアしたら自動的に次の投資へ進むようにする。
一件ごとに投資判断を仰ぐ形にすると、そのたびに審査が発生します。「このフェーズをクリアしたら次の投資へ進む」を先に合意しておけば、判断は最初の一回で済みます。
3. その事業単体の売上以外に、何が得られるかを合意に含める。
経営層に対しては、「今すぐ数十億円は稼げなくても、社全体にとって有益な資産が増える」という説明を用意しておきます。金額だけで判断される土俵から降りるためです。
⑥ あとで知った — PMFの定義に、順序が書いてあった

素朴な対処のつもりでしたが、調べると同じことを指す定義は、すでにありました。
PMF(プロダクトマーケットフィット)という言葉は、ベンチマーク・キャピタル共同創業者のアンディ・ラクレフが名付けたものです。考え方そのものは、セコイア・キャピタル創業者のドン・バレンタインに遡ります。
これを広めたのがマーク・アンドリーセンで、2007年夏の連載の中の「The Only Thing That Matters」という記事でした。彼はこの考えを「ラクレフの系(Rachleff’s Corollary)」と呼んで、こう書いています。
「唯一重要なのは、プロダクトマーケットフィットに到達することだ」
そして定義がこれです。
「プロダクト/マーケット・フィットとは、良い市場にいて、その市場を満足させられるプロダクトを持っていることである」
「良い市場にいて」が先に来ています。
私たちが数を打っていたのは、プロダクトのほうでした。市場は毎回、後から探していた。
そして、記事の題は「唯一重要なこと」です。到達することが唯一重要だと書いてある。到達する前に止まる仕組みで100回試すことは、定義上、一度も本題に入っていなかったことになります。
新しい理屈は、ひとつも要りませんでした。
⑦ 何が変わったか

数える対象が変わりました。
“`
前:年間に何本立ち上げたか
後:1→10へ渡った本数と、渡れずに止まった本数
“`
立ち上げ数を成果として報告している限り、この構造は温存されます。 立ち上げは通るからです。
報告書に並ぶのは、通った件数だけです。止まった件数を書く欄が、そもそもありませんでした。
⑧ 現場で使うなら、この2枚

表1:ステージと、次へ進む条件(先に合意する)
| ステージ | 何を確かめるか | クリア条件 | 次の投資 |
|---|---|---|---|
| 0→1 | 作れるか | 動くものが現場に出た | 小額・既に承認済み |
| 1→10 前半 | 市場が良いか | 想定顧客が繰り返し使った | 自動で次へ |
| 1→10 後半 | 単位経済が合うか | 1件あたりの採算が見えた | 自動で次へ |
| 10→ | 伸ばせるか | 供給を増やしても崩れない | 都度判断 |
「自動で次へ」の行があるかどうかだけが、この表の要点です。 全行が都度判断だと、必ず1→10で止まります。
表2:撤退の判定(同じ場所で死んでいないか)
| 見るもの | 判定 |
|---|---|
| 死んだフェーズの分布 | 一箇所に集中していたら、事業ではなく仕組みの問題 |
| 死因に金額の話が出た比率 | 高ければ予算構造が原因 |
| 立ち上げ数と到達数の比 | 立ち上げ数だけ報告していないか |
表3:報告に載せる指標を入れ替える
| いま報告しているもの | 入れ替え先 |
|---|---|
| 立ち上げ件数 | 1→10へ渡った件数 |
| 検討中の件数 | 止まっている位置ごとの件数 |
| 投下した金額 | 渡れずに終わった件数 |
3行とも、報告する側にとって都合が悪くなります。 立ち上げ件数は増やせますが、渡った件数は増やせないからです。だからこそ、入れ替える意味があります。
運用では、次の5件に名前を付けて配りました。名前が付くと、会議の中で指差せるようになります。
1件目、「0→1の成功は、まだ何の証明でもない」。 形になったことと、伸ばせることは別の話です。100回の起案が通っても、通り道が閉じていれば結果は変わりません。
2件目、「1→10の予算を、最初に確保する」。 伸ばす段階で改めて仰ぐ形にすると、そこで止まります。最初の合意に、次の枠まで含めておきます。
3件目、「ステージを跨ぐ判断は、都度ではなく事前に決める」。 何を満たしたら次へ進むかを、始める前に文章にします。都度の判断にすると、判断者の立場が判断の中身に混ざります。
4件目、「試行回数は、通り道が開いてから増やす」。 閉じたまま回数を増やすと、損失だけが線形に増えます。100回試して100回死ぬのは、これです。
5件目、「その事業以外に何が残るかを、合意に含める」。 売上以外に何が得られるかを最初に書いておくと、金額だけで判断されにくくなります。
この5件は、1枚に印刷して配れる分量に収めています。増やすと、誰も覚えません。
⑨ この考え方が効き続ける理由

新規事業の作り方は、これからも改良されます。それでも、この構造は残ります。 事業の作り方の問題ではなく、組織の中で金額の大きさが承認の重さを決めるという構造の問題だからです。
→ 0→1は小さい → 通る
→ 1→10は目立つ → 審査が重くなる
→ 重い審査は時間で止まる
→ だから、同じ場所で全部が死ぬ
試行回数を増やす前に、渡る先の板が架かっているかを見てください。 架かっていなければ、増やした回数のぶんだけ損失が積み上がります。年間数十億という額は、そうやって積み上がりました。
ただし、正直に書いておきます。この「自動で次へ進む」設計を、私はまだ完成形で見たことがありません。 ステージを割るところまでは多くの組織がやっています。その先の「自動で」が、たいてい骨抜きになる。結局そこで一度、人が判断する。 そこをどう設計しきるかは、まだ解けていません。
数え直すと、報告に使われていた指標は1件、使われていなかった指標は2件でした。使われていなかったのは、1→10へ渡った件数と、渡れずに止まった件数です。年間20〜30件を立ち上げて、渡った件数は0件です。
関連して、ビジネスモデルキャンバスの9マスを検証する話と、デザイン思考は聞くのではなく観察する話を別に書いています。事業計画が投資ではなく費用に見える話はすでに公開しています。あわせて読むと、同じ判断が別の場所でも効いていることが分かると思います。
この判断を実際の案件で使う場面については、新規事業コンサルとMVP・PoCのページに整理しています。
100回といえば、腹筋を毎日100回やると決めた年があります。3日でやめました。
0→1は、わりと得意なんです。 その先を一度も設計しなかったところまで、今日の話と同じでした。
以上です。
新規事業の課題のよくある質問
新規事業でよくある課題には、どんなものがありますか?
フェーズごとに変わります。社内リソースの段階では人材・予算・ノウハウが揃わないこと。事業計画の段階ではアイデアが出ない、顧客の困りごとを深掘りできていない、市場規模を大きく見積もりすぎる、仮説に固執する、差別化の理由を作れない、社内の合意が取れないこと。開発では範囲の肥大と反応の遅さと部門連携。市場投入では出す時期と最初の顧客とKPI。収益化では利益計画と撤退の基準です。
新規事業の課題は、どうやって見つければよいですか?
3方向から取りにいきます。顧客(実際に使う人に会い、いまどう済ませているかを聞く)、社内(使える人材・予算・データ・販路を棚卸しする)、外部(法制度・技術・先行プレイヤーの動きを整理する)です。顧客を飛ばした課題設定はほぼ外れます。社内会議で出た課題は、社内の人の課題であって、顧客の課題ではありません。
大企業の新規事業が、うまくいかないのはなぜですか?
社内の構造から出てくる要因が6つあります。経営層が成功の定義を示していない、数年周期で担当が異動する、前例のないことほど承認の段数が増える、人も予算も既存事業へ流れる、売上が立たない期間の働きを評価する軸が無い、そして簡単には撤退できない空気です。最後の1つがいちばん静かに効き、止まった事業に人と予算が張り付いたままになります。
新規事業の撤退基準は、どう決めればよいですか?
3点を着手前に決めます。いつ判断するか(その日をカレンダーに置く)、何をもって続けるか(続ける条件を数えられる形で1行書く)、誰が判断するか。要点は、確証が足りないからもう少し様子を見る、を許さない形にしておくことです。足りないまま判断する日として先に固定します。決めていないと、事業は止まらず判断だけが先送りされます。
新規事業の課題整理に使えるフレームワークはありますか?
よく使われるのは8つです。PEST分析(外部環境の変化)、SWOT分析(内と外の突き合わせ)、4C分析(買い手から見た価値)、ペルソナとジョブ理論(誰がどんな用事で使うか)、VRIO分析(強みが真似されにくいか)、ポジショニングマップ(既存の選択肢の中での位置)、バリュープロポジションキャンバス(提供物と困りごとの噛み合い)、リーンキャンバス(仮説を1枚に)。どれも整理の道具であって、答えを出す道具ではありません。
PMFとは何ですか?
プロダクトマーケットフィットの略で、良い市場に、その市場を満足させられるプロダクトがある状態を指します。ベンチマーク・キャピタルのアンディ・ラクレフが名付け、マーク・アンドリーセンが2007年の記事で広めました。重要なのは順序で、良い市場が先に来ます。プロダクトが良いかどうかではなく、市場が良いかどうかから始まります。
大企業の新規事業は、どの段階で死にますか?
0→1ではなく、1→10です。ある大企業は年間20〜30本の新規事業を生み出しましたが、PMFや黒字化まで押し上げる1→10フェーズで漏れなく全滅しました。起案は通るのに、伸ばす段階で止まります。アイデアの質の問題ではありません。
なぜ1→10で止まるのですか?
予算の構造です。0→1は小さい金額で承認できますが、1→10は目立つ金額になります。目立つ金額の失敗は責任問題になるため、審査が重くなり、実質的に通らなくなります。結果として、小さく試すことだけが繰り返され、伸ばす投資は誰も決裁しません。
試行回数を増やせば、いつか当たりますか?
当たりません。死ぬ場所が毎回同じなら、回数を増やしても同じ場所で死ぬだけです。実際に100回試行して100回死んだ記録があり、その活動に年間数十億が使われていました。掛け算の一項が0なら、試行回数を掛けても0のままです。
どう設計すればいいですか?
ステージを分けて、クリアしたら自動的に次の投資へ進む仕組みを先に作ります。一件ごとに投資判断を仰ぐ形にすると、1→10で必ず止まります。同時に、その事業単体の売上以外に何が得られるかを最初の合意に含めておくと、金額だけで判断されにくくなります。
- ① 教科書どおりに、数を打つ
- 新規事業の課題は、フェーズごとに変わる
- 社内リソースの課題1|必要な人材が確保できない
- 社内リソースの課題2|予算を確保できない
- 社内リソースの課題3|社内にノウハウと経験が蓄積していない
- 事業計画の課題1|アイデアが出てこない
- 事業計画の課題2|顧客の困りごとを深掘りできていない
- 事業計画の課題3|市場ニーズをつかめない・市場規模を大きく見積もりすぎる
- 事業計画の課題4|仮説に固執して、変えられない
- 事業計画の課題5|差別化の理由を作れない
- 事業計画の課題6|社内の合意が取れず、関係者に温度差がある
- 開発の課題1|作る範囲が膨らむ
- 開発の課題2|利用者の反応が返ってくるのが遅い
- 開発の課題3|部門をまたいだ連携が進まない
- 市場投入の課題1|出すタイミングを判断できない
- 市場投入の課題2|最初の顧客が取れず、KPIも決まっていない
- 収益化の課題1|利益計画と、価格・収益モデルを決められない
- 収益化の課題2|撤退とピボットの基準が無い
- 大企業の新規事業に特有の課題
- 課題の見つけ方|3つの視点
- 課題の整理に使うフレームワーク
- 外部のリソースを使うという選択肢
- ② そのとおりに進めて、全滅する
- ③ そして、死ぬ場所が毎回同じだと気づく
- ④ 原因は「0→1にしか予算が付かない」こと
- ⑤ 直してみる — ステージを割って、自動で次へ渡す
- ⑥ あとで知った — PMFの定義に、順序が書いてあった
- ⑦ 何が変わったか
- ⑧ 現場で使うなら、この2枚
- ⑨ この考え方が効き続ける理由
- 新規事業の課題のよくある質問